汝殺すなかれ

昔どこかで読んだ文章で、大人が近頃の少年の言動を嘆いて「どうして人を殺してはいけないのかと聞いてくる。その程度の道徳まで持ち合わせないのか」という主旨のものがありました。もちろん嘆かわしいのはこの文章の書き手の方で、当然の常識にあえて疑問を投げかける少年の感覚に全然ついて行けていないのが丸出しの恥ずかしい告白ですが。
とは言え、じゃあ自分が同じ質問をされたらどう答えるか、考えておくのは悪いことではない。今のところ、こんなのはどうだろうというのが二つあります。

  1. 「殺し=悪」の規定は多分に文化的なものだ。事実、仇討ちを容認するような文化も世界には現存している。ここで、日本を含めた多くの文化圏で殺しが悪なのには自然淘汰を想定すると理解しやすい。殺しを容認する文化を持ったコミュニティがもしあったとしたら、そこのメンバーは常にいつ自分が殺されるかわからないというストレスがかかり早晩コミュニティは維持できなくなる。そこから、殺しを悪としない文化は安定して存在しえないのだ。
  2. 君にとって最も大切な人を想起してみてほしい。そして、その人がもし殺人の被害者になったらと想像してみてほしい。それを想像したら殺人という行為に対して憎しみが生まれないだろうか。もしその感覚がぴんとこないなら、君がまだ人を愛するということを知らないのかもしれない。

はい、1番は自分だけ人間社会から離れてアカデミックな解釈に逃げていますね。2番はもはや話を全然別な方向にそらしています。
これは、仕方無い。だって、もともと善悪という概念自体が人間の勝手に作った恣意的な基準なんだから、完全な理屈を当てはめることなんてできないのは当然でしょう。どこかで思考停止するエンドポイントを作らにゃならんのです。・・・あ、そう説明する手もあるか。

もうひとつの認識

音声情報処理では、隠れマルコフモデルを使った音声認識について。ある音声波形Xがある単語Wを示している確率P(X|W)を求めます。これは高校で習った条件付き確率。これにはベイズの公式が適用できます。P(X|W) = \frac{P(X,W)}{P(W)} = \frac{P(W|X) P(X)}{P(W)}なので、単語Wから音声波形Xが発声される確率P(W|X)を求めれば、事前確率(単語Wの出現頻度と波形Xの観測頻度)をかけたり割ったりするだけで求まることになります。
発声される確率にマルコフ連鎖モデルを使います。発声過程を、状態変化とそれが単位時間内に起こる確率とで表現すれば、各音声パターンが出現する確率が求まる。有限の状態で表現できるように、音声スペクトルはいくつかのカテゴリに分類(量子化)してしまいます。音声スペクトルをグループ分けして量子化するアルゴリズムがLBGアルゴリズム。

無理無理無理無理無理

マーラー『復活』。3日前に初見。まだ音取れていないのに今日オケ合わせ。明日明後日本番。もちろん暗譜。・・・不可能問題かな?
それにしても、大人数の合唱では指揮棒の打点よりもテンポの遅れが常態化してしまいます。指揮者が振り下ろして、一瞬間をおいてから声が出てくる。その場合打点通りに歌えば当然一人飛び出すことになるから自分も遅らすしかないんだけど、間をどのくらいおくか測りかねるんだよな。