危ないのはその文章

自分の体は自分で守るしかありません。私は決して、中国産の汚染食物は口にしません。

中国で自然環境の汚染が進んでいて、中国産の食品がいかに危険かということを訴えるブログ記事。ブログと言っても、その記事一本しか掲載されていないのでコメント対応の1ページ構成のサイトといった方がいいかも。
さて、ここに載っている写真も事実も、かなり衝撃的。衝撃的です。が、これを衝撃的だと思っている時点でかなり危険な罠にかかっています。この記事よく読むと、実はほとんど意味のあることを言っていません。言葉をいじくり回すことで、なんでもない事実を衝撃的に仕立ててあるだけなのが大部分。はい、危険なのは中国野菜よりもこの文章の方です。(まあ、中国野菜も、この文章の信憑性云々以前にどうせいろいろとアレだろうとは思うけど)
というわけで、活字にだまされない練習のために、この記事の主張をちょっと読み解いていってみましょう。

  • 冒頭の写真集。まず、まったくの自然物である黄砂を汚染地域の画像と同列に並べている時点で萎えます。この時点で中立性を疑い始めて問題ないでしょう。
  • 環境汚染の実例の段。3歳の女の子に初潮なんて、そういう疾患は普通にあります。珍しくも何ともありません。特定地域である疾患が多いというのも、わざわざ病名を伏せている意図が不明。流行性の疾患であれば発生に地域差が出るのは当然です。急性中毒症状で死亡というのは実際にあった事件ですが、これは農作物に投与すべき農薬を作物に直接かけるという不正使用で農薬中毒が起こった人災。一過性の事件であり環境汚染とは無関係です。
  • 奇形動物の画像。動物に奇形が発生するのは当たり前です。中国ほどに多くの家畜がいれば、そのぶん大量発生するのも当たり前です。もし以前に比べて発生数が急増したというなら問題ですが、「毎年確認されている」ということはむしろ発生数に変化は認められていないと読み取るべきところです。
  • 障害児の出生数。「統計はあってないよう」という理由でいきなり伝聞になります。伝聞でも情報源の示しようはあるはず、それもそれがしやすいためのブログなのに情報源はなし。そして、その程度の伝聞なのに、その原因については「有害排水の垂れ流し、有害排煙、有害廃棄物の地中投棄が原因です。」と断定。
  • 「香港では内陸部からやってくる野菜を「毒菜」とすら表現しています。」毒菜というのは、上に書いた農薬中毒事件の原因となった野菜のことです。つまり、これは間違い。
  • キュウリの写真。曲がりくねっているキュウリは、奇形の実例のつもりなんだろうか・・・。すごい健康なキュウリにしか見えないわけですが。
  • 「牛肉のBSE検査なども、ろくにやってないのは間違いありません。」そう思うのは勝手ですが、思うだけにしておくべき推測ですね。そもそもBSEは、動物性飼料を牛の飼育に使うような裕福な地域で問題になる病気ですが。
  • 芝生に塗料を撒いている写真。あれは、「これは塗料である」と説明を受けた上でああ書いたのか疑問が残ります。なぜなら、肥料と種子を一緒にした緑色の吹きつけ緑化液というのがあるので。http://www.haraso.co.jp/syusifuki.html
  • 最終段はもはやどこに突っ込んでいいのかさえ悩みます。農薬使用と産廃による環境汚染をこれまでごっちゃにしてきただけで苦笑ものなのに、それを反日とごっちゃにし始めました。作物に重りを混ぜて水増しするのは不正取引であって食物の安全とは無関係だし、韓国のギョウザ事件については単なる犯罪者の言い訳。ここまで無関連な文をならべて何が結論したいのか・・・。

というわけで、この記事からほとんど情報は得られませんでした。得られたとしたら、『「加工」「業務用冷凍」されて日本に輸入されているのです』のくだりくらいかな。
さて、こういうトンデモ解説記事は、本当にどこにでもあります。全国紙の記事にだって学術論文にだって。トンデモ文章汚染の方がよっぽど深刻。
とにかく、論理的筋道がしっかりした文章なら、読んだ後に自分で再構成できるはずです。再構成しようとしてわけがわからなくなるなら、トンデモをつかまされたのでは? と考えてみていいんじゃないでしょうか。