『南の島のティオ』

のほほんとして、ファンタジーも入り交じった短編集。なにか不思議なできごとを毎回期待させるあたりは西岸良平の『鎌倉ものがたり』を思わせるかな。いや、小松左京の『空中都市008』、これだ。これが雰囲気近い。どっちにしろ、沖縄に向かう機上で読むには最適な本でした。ただ、背表紙の解説の文言が納得いかないな。「・・・つつましさの中に精神的な豊かさにあふれた・・・」って、いや、そういうテーマのお話しじゃないぜ? こういう使い古された表現でものを言おうとしたって情報量はゼロだってことかな。
使い古された表現と言えば、ブラックジャックのテーマを「人間愛」だと表現するのに昔から納得がいきませんでした。それも全然違うだろと。特異な能力を、己の信念と良心のために、ときに迷いながらも捧げていく姿。それを「人間愛」とか総括するのはちょっと的はずれなんではなかろうか。ブラックジャックのテーマは「ダンディズム」であると看破していた人がいました。それなら結構近いかも知れない。
・・・あれ? いつのまにブラックジャックの話に。