肉と魚の不思議

すごく一般的な質問として、肉と魚、どっちがおいしいですか?
そんなの種類と料理によるに決まってるけど、全体として。
肉の方だと思うんです。
もちろん魚もおいしい。が、よく「肉に偏らず魚も豊富に食べましょう」と言われますね。逆は言われない。つまり人間は健康のこと(と財布の事情)を考えずに放っておかれれば肉の方をよく食べてしまうってことです。
さてもう一つ一般的な質問。肉と魚、どっちが健康にいいですか?
これももちろん種類と料理によるだろうけど、それを抜きにしても魚の方が健康にいいのは当然です。「魚を食べる人の方が発症率が低い」ことが判明しているような病気は心筋梗塞からアルツハイマー病までいくらでもありますし。体にいい成分としてDHAEPAだなんてのは健康番組にもよく出てきますよね。
これって不思議じゃありません?
人間は環境に適応しながら進化してきたんです。食べると体にいいはずの魚介類を、あまりたくさん食べない方がいい肉よりもずっとおいしく感じるようにできていていいはずなのです。
まあこれは、簡単に説明できると言えばできて、単に進化の歴史で、肉をたらふく食べられるような機会というのがほとんどなかったから、ってところでしょう。
不思議と言えば魚が体にいい理由も不思議ですよね。機序はいろいろあるだろうけど、例えば上で挙げたようなDHAとかEPAみたいな「体にいい成分」を含んでいるからってのがあります。じゃあ、そんなに体にいい物質があるならなんで人体はそれを最初から自分で大量に作らないのかと。少なくともお魚さん達は自分でそれを合成してるんだからできないわけはないんです。
DHAEPAはピンと来ないかもしれないのでもう一つ例を挙げると、肉食のライオンは植物を食べなくてもビタミンC不足で壊血病になったりしません。なぜなら自分で合成できるからです(自分で合成できる以上必須アミンビタミンとさえ呼べない)。人間だって自分で合成できれば大航海時代の船員は壊血病に悩まされずに済んでいたんですよ。
こうして考えると、人間の体はものすごく精密で合理的でありながら、完璧ではないと言えると思います。
実はこのことは、アメリカで猛威をふるっている創造論やID論への強力な反論にもなっています。全知全能の神様だかデザイナーだかが人間を含む生物を創造したというけれど、それでは人体の不完全さを説明できないんですね。なんの意志も介在しない偶然に左右された進化こそ、ちょっとした不完全さをすんなり説明してくれます。
人体の不完全性は、もっとひどいのもありますよ。例えば心臓が二心房二心室なこととか。人間よりずっと大きいジンベエザメも一心房一心室で問題ないのに、わざわざ奇形の原因にもなる複雑な構造をしているのは、消化管から肺ができたという進化上の都合でしかありません。そう言えば、消化管から肺ができたせいで、食道と気道が出入り口を共有しているという大きな欠陥もありますね。
創造論なんか本気で信じているのはアメリカ人ぐらいだと思っていたら、アメリカ礼賛の某新聞が日本にも持ち込もうとしていたので、ちょっと考えてみました。