エネルギー損してる?得してる?

電車のなかを歩くとき、電車の加速やブレーキにあわせて歩くと楽ですね。先頭車両に向かって歩きたいときは、駅に近づいてブレーキかけ始めてから歩き出せば楽に前へ行けます。後尾車両へ行きたければ発車して加速しているときに歩けばいい。
電車のパワーに後押ししてもらっているわけです。じゃあ、電車はそのぶん仕事量が増しているか? でも、加速中に後尾へ歩くときのことを考えてみましょう。乗客はあくまで床を進行方向に向かってけり出しているわけだから、電車の仕事を助けていることになります。さあ、どっちなんだろう、電車はエネルギーを損しているのか得しているのか?
はい、ここにダウト。
乗客は後尾方向に進んでいるから先頭方向に床を蹴っているつもりでも、実は床を後尾方向に向かって押しています。地上の視点で見れば乗客は電車と一緒にどんどん進行方向へ加速していっている・・・ということは床が乗客を進行方向に押しているわけで、作用反作用の法則で乗客は床を後尾方向へ押しているんですね。
さて、床が乗客を押すのに使ったエネルギー(仕事量)は普通より多いんでしょうか少ないんでしょうか。乗客が客室内で一定速度で歩くとすれば地上視点での加速度は電車の加速度と同じです。つまり、かかる力の大きさは歩いていない場合と同じ。ここで、
仕事量=力×距離
でしたね。電車が加速を終了した時点で乗客につぎ込んだ仕事量は、そこまでで乗客が発進地点から何m進んだかで決まります。すると・・・そう、後尾へ向かって歩いた人は、止まっていた人よりも進んだ距離が若干少ない。消費した仕事量は少ないのです。
というわけで結論。後尾車両へ行きたければ、加速時に歩くようにすれば自分も楽だし電力も少しだけ節約できる。

(12/9追記)
これでは摩擦で失われるエネルギーのこと考えてませんでした。車内で後ろへ向かって加速度がかかるのに等速で歩く乗客は、ブレーキをかけながら歩いているようなもの。もらったエネルギーを熱にして捨てていることになります。
ここでもらって捨てたエネルギーの量は、力×距離ということで、電車の加速度×乗客の歩いた距離。
そして加速が終わった段階で車両と乗客が持っている運動エネルギーは歩いていて求まっていても同じ。ということは、この捨てた分のエネルギーだけ、歩いた場合の方が電力消費が多くなるってことになるのでした。
・・・電車に乗っているとき、こんなことばっかり考えていないでもっと建設的なことを考えればと思います。