ニコチン中毒いうな

「中毒」という言葉はかなり「依存症」と混同されていて、世間ではあんまり区別されていません。最大の理由は、(慢性)アルコール中毒とアルコール依存症が表裏一体の関係にあってあまり区別する必要がないからでしょう。
中毒というのはまさに「毒に(あた)る」ことで、有害物質で身体機能が障害されること。依存症が「やめられなくなる」ことだから全然違うんだけどね。慢性アルコール中毒の場合、アルコールによる知能低下とか人格崩壊が依存と密接に関わっているから切り分けにくくて、そのせいで「中毒」と「依存症」の混同の原因になったんじゃないかと推測しています。
さて、そこで問題が「ニコチン中毒」。ニコチン自体の直接毒性が問題になるのは、子供が灰皿の水を飲んでしまったなどの場合です。喫煙がやめられないニコチン依存とは全然別物。それを混同するから、苦笑するしかない場面によく出くわします。
健康に気を遣うといって低ニコチンのタバコを吸う人。ニコチンは依存物質であってタバコの有害物質はそれ以外のもののほうがずっと多いので、何の効果もないよね。というより、ニコチンを要求量だけ摂ろうとするとより多くの本数を吸わないといけないので有害物質の摂取量(そして放出量)は増えてしまうという現実。
「ニコチンをビタミンに変える」という薬。ニコチン自体を減らしたって体への害は減らない、というかニコチン切れを早めて吸う本数を(以下同文)。
ニコチン中毒という世間用語ははやいところ切り替える必要があります。煙をわざわざ吸い込むという異常行動に注目することで精神疾患の一種として嗜煙性障害と呼ぶとかね。