ある意味「怖い本」

受験中にふと買ってきてあっという間に読んでしまった小説が『ペトロス伯父と「ゴールドバッハの予想」』。面白いのでいまでもときどき読み返してます。著者はギリシャ人。
数学史上の超難問の証明(現在も未解決)に挑んで敗北していく天才数学者の軌跡をその甥が追っていくサスペンス。ペトロスの一生が甥の半生と交錯しながら次第に語られ、栄光と挫折が明かされていきます。ここでミソになるのがゲーデル不完全性定理。数学には、真だけど証明できない命題がある、という定理の登場です。追いかけている問題は、もしかしたら絶対に解決できない問題なのかもしれないという不安感。しかもそれが解決不能なのかどうかを知ることさえできないということを、わざわざアラン・チューリングが登場して宣告していきます。世紀の難問だけを目標に手を尽くしてアプローチしてきたところにこの事実を突きつけられたら、立って闘い続ける気力を持ち続けられるやつなんているのかどうか。
そして、不完全性定理というものがあることぐらいは百科事典で読んで知っていたんだけど、その意味というか恐ろしさはこの本を読んで強烈に印象づけられました。理系の人間としてこれは鳥肌ものの怖さ。
ただ、実はこのチューリングの示した定理が「バグのないプログラムはない」ことの証明になるんだけどそれを知っている人は少ないんじゃないかな?